海外CGアニメーターのわかすぎ(@ryowaks)です。普段はバンクーバーの映画スタジオでハリウッド映画(今まで関わった作品)作ってます。週末はオンラインスクール(アニメーションエイド)でアニメーションを教えてます。
今日はキャラクターのリグのIKとFKについて「アニメーションで動きを作る」という観点からどちらを使えばいいのか?やそれぞれ仕組み、特徴を解説していこうと思います。
今回の記事は、、、
- そもそもIKとFKとは何なのか?
- どちらを使うべきなのか?
- それぞれどういうメリットとデメリットがあるのか?
について、初心者アニメーターやこれからCGのアニメーションを勉強しようとしている方に向けて解説していこうと思います。
アニメーションをやるためのIKとFKの完全ガイド
そもそもIKとFKというのは、インバースキネマティクスとフォワードキネマティクスという正式名称です。名前は正直全然覚えなくてOKです。
アニメーターの観点からは、キャラクターを動かす時の仕組みとして、根本的にIKとFKというそれぞれ2種類の方法がある!みたいな感じで覚えておけば大丈夫です。
- IK→あやつり人形のように動かす(手首が移動と回転両方出来て、手首の動きが中心)
- FK→人間の関節の仕組みと同じように動かす(肩と肘と手首、回転のみ、関節の回転の動きの組み合わせが中心)
ちなみに腕に限らず、足や背中、頭でもIK/FKの選択肢がある場合があります。今回の記事の説明ではわかりやすいように腕だけになっている部分も多いのですが、どの部分のIK/FKでも基本的な仕組みや注意点は同じです。
IK/FKは最適な方を選ばないと作業効率がものすごい悪くなったり、アニメーションのクオリティに影響が出てきてしまうので要注意です。プロのアニメーターであれば経験則からこっちを使えばいいみたいなことがある程度わかるのですが、初心者やアニメーションの勉強を始めたばかりの方にはその感覚がまだないと思うので、ここから論理的にIK/FKを「アニメーションで動きを作る」という観点から詳しく解説していきます。
IKとFKはそれぞれ特色とメリットとデメリットがあるので、しっかりと理解して、状況に応じて選んで使いこなせるようになりましょう。
IKについて
IKの特徴は空間やある一定の場所に留めておきたいときなどに便利です。
- ドアノブを握っている
- 机の上に手を置いている
- 歩いている時の足
- 車のハンドルに手をおいている
などなどです。
IKのいいところ
IKの場合一定の場所に留めておくのが簡単なので、どこかにおいておきたい時に便利です。またポーズを作る時には、手首のコントローラーの移動と回転だけでポーズを作れるのでより直感的にポーズが作れて、なおかつ使うコントローラーの数も少なくてすみます。
IKで気をつけたいところ
CGアニメーションでよく言われる「IKっぽい動き」というのがどうしても出てしまいます。この「IKっぽい動き」というのを解消するのが少し面倒です。(場合によっては1フレームづつ調整が必要になってくる場合もあります)
「IKっぽい動き」に関しては、この3つのポイントに気をつけましょう。
①手首が空間に残ってしまう
②肘だけがパカパカ動いてしまう
③手首の角度固定で移動してしまう
このあたりの動きが見えてしまうと、プロのアニメーターからすると「あ、IKっぽいな」と違和感として見えてしまいます。初心者のアニメーターは気をつけましょう。
FKについて
FKの特徴は、それぞれの関節で回転しか出来ないのですが、人間の関節はそもそも回転しか出来ない仕組みになっているので、人間の本来の関節の動きに近いです。ただ、動かす時にはワールドとローカルの関係のように、手首は常に肘の回転の影響を、肘は肩の回転の影響を受けるという特徴があります。
FKのいいところ
FKのメリットは特徴の部分でも書いた通りに人間の関節の本来の動きに近いので、人間の自然な動きを作るときに作りやすいという点があげられると思います。
FKで気をつけたいところ
FKの場合もIKと同じように「FKっぽい動き」に気をつけましょう。では、FKっぽさとはなにかというと、ワールドとローカルの使い分けがキーポイントになってくると思います。
基本的にFKというのは人間の関節と同じような動きをするので、FKっぽく見えて悪いということはあまりないのですが、悪い意味でのFKっぽさというのは胸や腰の動きにピッタリとくっついて動いてしまうような動き(フィギュアの人形のような感じ)のことを指します。
これはほとんどの場合は、回転の設定をローカルからワールドに切り替えると解消できます。
IKとFKどっちを使うべきか?
個人的には特に腕に関しては、基本的には出来る限りFKでやるようにしています。理由としてはIKを使うとやはりどうしてもIKっぽさが出てしまうので、これを自然に見せるための時間と労力のコスパが悪いからです。
本来ならIKを使うべき状況でも、もし可能であればFKのままやってしまうこともあります。なので、どうしてもIKでないとダメな状況を除いて基本的にはFK優先です。
IKとFKの切り替え
状況に応じて、同じカットの中でもIKとFKを切り替えないといけないという状況があります。やり方は結構簡単で、IKとFKのスイッチを0→1、もしくは1→0に1フレームで切り替えるだけでOKです。
ただし、この切り替えに関して要注意なのが、IK/FKを切り替えるとポーズがパチっと飛んだ感じになってしまいます。
解決策として、1フレーム以上かけて切り替える方法もあるのですが、あまりおすすめしません。なぜなら半分IKで半分FKのような部分が出来てしまい、管理がめちゃくちゃ面倒になるからです。IKとFKは必ず1フレームで切り替えるのがいいと思います。
いいリグやプロが仕事で使うリグなどでは、このパチっと飛んでしまったポーズをボタンを押すだけでぴったり合わせることが出来るツールがあるので特に心配はないのですが、そのツールが無い/機能しない場合や、モーションブラーで問題が出る、ツールを使ったあとまた微調整すると面倒くさいというが問題点があるので、個人的におすすめの切り替え方法を書いておきます。
IK/FKの切り替えの問題は、上で書いたとおり1フレームで切り替えるので少しでも前のポーズとずれてしまうとバレてしまうということです。特にほとんど止まっている動きの部分で切り替えるのはかなり至難です、というかツール等が無いとほぼ不可能です。
そこで、このIK/FKの切り替えのうまいやり方としては、「なるべく大きく動いている部分で切り替える」というやり方です。大きく動いているところであれば、ポーズの変化量が大きいので前のポーズとピッタリ合わせる必要がありません。
どちらにしてもこのIK/FKの切り替えは結構面倒なので、なるべく全てFKで出来るところまでやります。数フレームだけどうしてもIKの方がいい場合などは、FKで力技でやってしまうこともあります。それはIK/FKの切り替えの時間と労力のコストが高いと思ってしまうからです。
足のIK/FK
足の場合は、9割くらいの確率でIKでやったほうがいいです。理由としては、シンプルに足は地面と触れている事がおおいので、FKでやってしまうと腰を動かすたびに足が地面から離れたり、地面を突き抜けていったりしてしまうからです。
ただしこれもやはり例外というのがあって、FKでやった方がいい状況も存在します。どういう場面かというと、地面から足が離れている場合です。
- 水の中を泳いでいる
- スカイダイビングみたいな空中を落下
- 吊るされて空中に浮いている
- 椅子やブランコに乗って足が宙ぶらりん
今回の内容はここまでです。アニメーションではいいリグを使うことはもちろん大事ですが、このIKとFKを正しく扱うことも結構大事になってきて、クオリティにも影響してきます。
少しでも参考になっていたらうれしいです、読んで頂いてありがとうございました。
わかすぎ
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