海外CGアニメーターのわかすぎ(@ryowaks)です。普段はバンクーバーの映画スタジオでハリウッド映画(今まで関わった作品)作ってます。週末はオンラインスクール(アニメーションエイド)でアニメーションを教えてます。
今日はCGの勉強を始めた、もしくはこれから始めようとしている人に良く聞かれれる質問に答えてみようと思います。
その質問とは、、、
これからCGの勉強を始めるならBlenderがいいですか?
です。Blenderは最近はCG業界や他でも良く話題に上がるので、こういう質問が来るのも納得です。ちなみに今回の内容はCGアニメーターからの目線なので、他の職種や別の業界では違うこともあるかも知れません。
ちなみに僕は海外で、ハリウッド映画のCGアニメーターとして仕事をしていて、これまでこんな作品に関わってきました。海外のスタジオでの現状も踏まえながらこれからCGの勉強を始める上で迷っている人に向けて書いてみます。
これからCGを勉強するのならMaya?Blender?
結論から言います。今から勉強するのであれば、BlenderよりMayaの方がいいです。特に学生であれば、Mayaの学生版は全て無料で使えます。
Blenderは誰でも無料だし、最近はBlenderが結構流行っている印象なのにどうして!?ということで僕の3つの理由をこれから書いていきます。
1、仕事ではやっぱりMaya
Blenderはすごい流行っていますが、業界全体が数年のうちにBlenderに切り替わるというのは正直思えないです。現在の仕事の流れや使っている環境をまるまる変えるのは、かなりコストがかかるだろうなと思うからです。
またソフトの優位性に関しても、アニメーションに関しては機能やツール面ではMayaよりBlenderが優っている部分はあまりないと思います。むしろMayaの方がアニメーションに関しては扱いやすいかも知れないです。
確かに一部の会社ではBlenderを使い始めていますが、今からCG業界の就職を目指してCGの勉強を始めるとすると、母数的にはやはりMayaの方が断然有利だと思います。
またもう一つ覚えておいて欲しい事があります。それは、仕事の部署によって使うソフトが違う場合の方が多いという事です。僕が今働いているソニーピクチャーズでも、アニメーターはMayaを使っていますが、他の部署では違うソフトをがんがんに使っています。
つまり会社でBlenderを導入したとしても、そのソフトを使うメリットがその仕事の部署に無かったとしたら、他の部署ではBlenderを導入したけどアニメーターの部署は引き続きMayaを使っています、というような状況というのも全然ありえます。
2、調べることが出来る情報量
ソフトを使っていて問題が出たり、もしくは必要なツールやスクリプトを検索するときにMayaの方が圧倒帝に検索出来る情報量が多いです。
Blenderも今や確かに色々な情報が出回っているので簡単に沢山の情報にアクセスできるようになっていますが、やはり情報の絶対量はずっと使われているMayaなどのソフトには負けてしまうと思います。
また、具体的なソフトの使い方やツール以外にもアニメーションの技術的なチュートリアル動画などもMayaを使ったものが圧倒的に多いので、そういう技術を高める為の教材の数という観点でもかなりMayaの方が有利だと思います。
そういう意味ではむしろ逆にこれから勉強し始めるという初心者の方は、何か問題が出た時に直ぐに色々と情報を検索出来たり、様々なチュートリアルも沢山見つかるMayaの方が学習の最初の導入としてはハードルが低いように感じます。
3、結局は道具
個人的にMayaを使った方がいいと思う一番の理由はこれです。正直に言うと、BlenderがいいのかMayaがいいのか、、、ぶっちゃけどっちでもいいです。なぜならこれらは結局ただの『道具』だからです。
どんなに良い道具を持っていても技術が無ければ全く意味がありません。特にアニメーションの場合は残念ながら知識というのはほぼ価値がありません。知識は自分の技術に応用して、使えるようになって始めて価値になります。
そういう意味では残念ながらアニメーターにとって、Blenderが使える、Mayaが使えるというのはそれだけでは価値が無いんですね。何が出来るのかが一番大事という事です。
ただ、この話を裏返すと、しっかりとしたアニメーション技術さえあればその後で他のどんなソフト(BlenderやMayaに限らず)に移行してもほぼ問題無いです。というか少し大げさかも知れないですが、新しいソフトでも半日くらいあればアニメーションのやり方くらいなら余裕で覚えられます。ピクサーでは社内のソフトを使ってアニメーションをやるのですが、そのトレーニング期間は1週間でそれでみんな十分にソフトを使えるようになっていました。
つまり、アニメーションを作るという技術さえあれば、ソフトはただの道具なので「どのソフトを使ってアニメーションの勉強を始めるのか」はそこまで重要じゃないと思います。
その上で、じゃあ、なるべく使いやすくて、問題が出ても情報検索しやすくて、色々なチュートリアルの情報や動画が豊富にあって、就職した後にそのまま使う可能性が高いソフトを使って勉強始めた方がいいんじゃない?という結論でした。
- アニメーション使いやすい
- ソフトに関する情報量が多い
- チュートリアル系の動画もたくさん
- 仕事でそのまま将来使う可能性が高い
料理人を目指している人が包丁を選んでいるような感じです。少し高いかも知れないけど、逆に最初だからこそやっぱり一番売れていて、握りやすくて、使い方も分かりやすい包丁で修行した方がいいんじゃない?みたいな感じです。
学生ではない人にとっては、Blenderと比べてやはりMayaの方が高いので、結局のところやはりそこがネックになっているという人もいると思います。ただ、今はサブスクになっているので、導入コストも少し低くなっていますし、将来的に自分がずっとやりたかったCGの仕事に就ける、その技術を使って海外にも行ける可能性がある、という事を考えるとそこまで悪い自己投資ではないと思います。
それでもBlenderを選ぶ場合
それでもどうしてもBlenderの方がいいんじゃないかという人のために、Blenderで学習を始めた方がいいパターンもちょっと考えてみました。
- プロとして就職を考えていない人(趣味でCGやるのも全然アリだと思います!)
- 学生ではなくてどうしても予算的に厳しい人(サブスクでも厳しい人)
- アニメーション以外のCG職種を目指している人(幅広い知識を得ておくと役に立つ職種もあります)
- 具体的な会社やプロジェクトをピンポイントで狙う人(具体的に目標が決まっていたらアリですね!)
特にアニメーション以外のCG職種を目指している方の場合は、アニメーションとは違って知っている知識が価値になる場合もあります。つまりどれだけ知識の幅が広いか、色々な側面の事を知っているのかが価値になる職種ということですね。
具体的にどの職種なのかと言われると、そこまで詳しくないのでここではあまり触れませんが、いわゆるTDと呼ばれるテクニカルな面を担当する仕事をしている人はそういう傾向があるような印象です。そういう仕事の場合には色々なソフトの知識が役に立つこともあるかも知れません。
もしくは、圧倒的にBlenderが優れている側面(Eeveeなど)が具体的な職種やプロジェクトに役立つ場合もあるかも知れません。そういう場合にはもしかしたら近い将来にその仕事を目指している場合にはBlenderが役に立つかも知れないです。
今回の記事はこんな感じです。少しでもこれからCGの勉強を始めようと思っている方の助けになれば幸いです。
最後まで読んで頂いてありがとうございました。
わかすぎ
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